一部報道によれば、トランプ米大統領は手頃な価格の住宅供給拡大を目指す包括的な住宅法案に対し、署名を見送る方針を明らかにした。トランプ氏は、自身の求める選挙制度改革法案が議会を通過するまで署名式を行わない意向を表明している。

住宅問題という国民生活に直結する政策を、選挙関連法案を通すための交渉材料として扱う戦略を採った形だ。もっとも、当該法案はすでに連邦議会の上下両院で可決されていることから、大統領が署名を拒否し続けたとしても、憲法の規定に基づき一定期間を経て自動的に法案が成立する公算が高い。
この住宅法案は、住宅不足の解消と価格抑制を主眼に置く包括的な政策である。本年3月頃から上院を中心に議論が活発化し、住宅開発に伴う環境規制の緩和や、大手投資家による住宅買い占めへの制限といった具体策が検討されてきた。
住宅価格の急激な上昇が中低所得層の生活を圧迫する中、住宅供給の停滞を打開するために連邦レベルでの抜本的な法整備が不可欠であるとして、共和・民主両党の間で超党派の合意形成が進められてきた経緯がある。
今回、トランプ氏は「自分が優先する選挙関連法案を通すのであれば、議会が強く望むこの住宅法案に署名する」といった形の交換条件を突きつけている。いわゆる「バーター(物々交換)取引」である。国民が待ち望む住宅対策というカードを使い、選挙ルールの変更を議会に飲ませようとする政治的な駆け引きだ。
今後の情勢については、住宅法案そのものは大統領の署名がなくても自動成立する見通しであるため、法案が廃案になる可能性は低い。焦点は、トランプ氏の強硬な姿勢が選挙法案の審議にどのような影響を与えるか、そして議会共和党がこの要求にどう対応するかという点に集約される。


