内閣府は、日本の経済状況に関する分析をまとめた「日本経済レポート(2024年度)」(ミニ白書)を公表した。これによると住宅投資は、建築コストの高止まりの中で、横ばい圏内の動きが継続しているという。
以下、同レポートから引用した内容には引用符を付けた。蛍光ラインはNJS.oneで加えた。
新設住宅着工戸数の動向は全体として2023年秋以降、主に建築費の上昇・高止まり等の影響から、弱含みの動きが続いていたが、2024年半ば頃からはおおむね横ばいで推移している。
戸建住宅のうち、持家(注文住宅)の着工は、建築費の高止まりが続く中で、弱含みから横ばい圏内で推移していたが、価格が高止まる中にあって、高付加価値住宅への需要など、受注が底堅く推移していることから、2024年半ば以降は底堅く推移している。
また、分譲戸建(建売住宅)も、建築費の高止まりによる販売不調から在庫の過剰感がみられ、着工戸数の減少が続いていたが、在庫調整が一服する中、2024年秋時点では下げ止まっているとみられる。
分譲共同住宅(マンション等)については、他の形態と同じく建築費の高止まりに加え、マンションに適した大規模土地取得が近年容易ではないという事情もあって、大規模土地取引件数を均してみると、緩やかな減少傾向にあり、着工戸数は振れを伴いながら、トレンドとしてはおおむね土地取引件数と整合的に推移している。
貸家についても、月々の振れが大きいが、法人(不動産会社やREIT)による建設は底堅い一方で、家計(個人)による建設は低調に推移している。背景には、賃料が上昇傾向にあるものの、建築費の高止まりなどもあって、賃貸利回りが低下していることがあると考えられる。
各形態の着工戸数に影響を与えている建築費の動向をみると、木造、RC造を問わず上昇傾向が続いている。建設工事費デフレーターの内訳をみると、原材料コストの上昇は一服する一方で、人件費要因が拡大傾向にある。建設業では、中小企業を含めて労務費を含むコストの価格転嫁が相対的に進んでいることを反映していると考えられる。
建設工事費デフレーターとは、建設工事にかかる費用の変動を測るための指標。
住宅ローン金利の(中略)変動金利の動向をみる。住宅ローン変動金利は、短期プライムレートが参照され、短期プライムレートは政策金利(無担保コールレート(オーバーナイト物))に連動する。政策金利は、日本銀行による2024年3月のマイナス金利政策の解除の後、同年7月に0.25%程度への引上げが行われ、短期プライムレートは、2024年9月に、2007年3月以来17年半ぶり上昇した。この中で、変動金利も2024年10月にメガバンクを含む各行が基準金利を0.15%程度引き上げた影響で足下ではやや上昇している。
また、固定金利については、長期金利(新発10年債利回り)が緩やかに上昇する中、これに連動して上昇しているが、長い目でみれば低い水準にある。
こうした中で、日本銀行「主要銀行貸出動向アンケート調査」における個人向け住宅ローンの資金需要判断DIをみると、2024年10月時点ではおおむねゼロ近傍で推移しており、悪化しているという姿にはない。このように、現時点では、住宅ローン金利の上昇は限定的であり、今後の動向は注視する必要があるものの、住宅投資需要への影響は顕在化しているとはみられない。
資金需要判断DIとは、資金需要の増減を反映した経済・景気判断指標。日本銀行が主要な貸出金融機関に実施したアンケート結果をもとに算出している。
中古住宅の販売量については、建築費による新築住宅価格の上昇の中で、価格面での相対的な優位性から、新築の着工戸数とは対称的に、戸建・マンションともに増加傾向で推移している。仲介手数料の代理指標として、不動産取引業の売上高を対応する物価指数で除した実質値でみると、販売量には遅行しているものの、このところ緩やかな増加がみられている。
リフォームについても、受注高をみると、省エネリフォームへの各種補助金の効果もあって、振れを伴いながらも増加傾向にある。ただし、建設補修の建設デフレーターで除した実質値については、工事費の上昇継続により、横ばい圏内となっている。人口減少や単身世帯の増加など人口・世帯構造が変化する中で、持家を中心に住宅需要は長期的には減少傾向で推移することが見込まれる一方、住宅ストック戸数は世帯数を上回る状況が続いており、今後は、リフォームの促進を含め、中古住宅取引市場の活性化を進め、豊かなストックを有効活用していくことが一層重要となる。比較的安価な既存住宅ストックを有効活用することにより、ゆとりある暮らしと豊かさを感じられる経済社会につなげていくという視点が必要となろう。



